2015/03/16| 七福萬来
忠誠心
時代が違うってわかっちゃいるけど 『知らないの?』 と思うことが増えてきました。
テレビドラマ ”北の国から” を知らないことに驚きを感じたと思えば、3人組のアイドルだったキャンディーズを知らないという。
世代交代を感じる時です。
あの日本を代表する戯曲 ”忠臣蔵” も知らない世代が増えてきている。
私が忠臣蔵を知ったのは 中学生のころで、母親から教えられた。
学校で習った記憶はなく、12月14日になると父や母が 「今日は討ち入りの日」 と言っていた。
学校でも教えないし、親からの情報もなくなると 今の若者が知らなくなるのは必然的。
となると ”忠誠心” なんて言葉は現実離れしてくる。
そんなことをおぼろげながら思っていたら、決定的なことが起こりました。
先月末に今治で落語会をした時のこと。
初音家左橋師匠と柳家一九師匠の二人会。
最後に一九師匠が口演したのは ”藪入り(やぶいり)” という人情噺。
藪入りとは、奉公人が実家に帰ることを許される日のこと。
7歳で奉公に出された一人息子が3年ぶりに藪入りで家に帰ってくる親の心情を描いた落語です。
息子が銭湯に行っている間に小遣いを入れてあげようと息子の財布を開けると5円札で3枚 15円というお金が入っていた。
明治時代の15円といえば今のお金にすると子供が持つようなお金ではありません。
父親は店のお金を盗んできたのでないかと疑る。
でも実は、当時ペストという大病が流行っていて、ネズミを捕獲し警察に持っていくと1匹につき1銭もらえて、しかも懸賞にも参加できる。
その懸賞に当選した15円だった。
店の主人が預かってくれて、藪入りの日に親に持って行ってあげなさいと、返してもらったのだった。
理由を聞いて息子を疑ったことを反省した父親がオチを言う。
「これもみんなチュー(忠)のおかげ。」
懸賞金に当たったことを ネズミとご主人への忠誠心をかけたオチなのですが、後日オチがわからなかったという人がチラホラいました。
ネズミの鳴き声であることは理解していますが、なにとかけているかが謎だったというのです。
とある若者に尋ねました。
「君って、会社への忠誠心ってある?」 と、尋ねるとあっさり
「特にないですね。」
・・・やっぱり!・・・
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コメント一覧
コメントありがとうございます。
私は上京したての19歳の時に三遊亭金馬師匠の口演でしたが、内容もサゲもよくわかりました。
ホームシックにかかっていたころだったので、タイムリーだったことをよく覚えています。
時代にそぐわないサゲはイジるか、変えないでわかる人たちだけの優越感に取っておくか、どちらかでしょう。
『藪入り』は、後者かな。
又お邪魔しました。 一九サン「藪入り」、その前にお二方は何を演じたのかは判りませんが、今の時代に演りにくい又は演っても判らないという噺は増えるばかりであります。先日亡くなった米朝師の演じ方は「今日はもう誰も判らんという古い古い噺を」という前置き、 もう客に判らないという前提で演じてました。 本来落語は「お客様に少しの知識と大きな想像力が求められる芸」であります。素人でいまだに落語を演じてるワタシの感覚でも、時代が変わり過ぎて最早多少の改変では理解出来ないと思われるものが増えました。 落語や時代物小説の愛好家なれば常識であっても、それは所詮マイノリティ、そうでない多くのマジョリティ相手には枕や途中でさりげない説明が欠かせません。 上手に入れないと変にソコが浮いちゃう・・・。 「鼠の懸賞」は勿論説明したのでしょうが、「忠」ね、ヤッパリサゲをイジらないと無理かな?