2010/04/30| 七福萬来
天城越え
と、自分でも説明不可能な行動があります。
例えば、買い物に行って目的のものを買うつもりが、別なもの買ってしまう時があります。
東京出張の際、山手線に乗るつもりが、平行して走っている京浜東北線に乗ってしまい、乗換えをしなくてはならなくなったりもします。
どこかで別な衝動により行動の変化が起こるのでしょう。
好きな女の子がいて、わざと嫌われる行動をしたりするのも良く聞く事です。
言葉では説明つきませんが、行動そのものは理解できます。
松本清張さんの作品で ”天城越え” という短編小説があります。
時代は大正時代、伊豆・下田に住む16歳の少年が家出をします。
天城越えをして行こうとしますが、途中日が暮れかかったところで、心細くなり下田へ引き返すことを考えていたところ、一人の女に出会います。
そして女と下田まで道連れになります。
少年にとってその女は友人であり、大人であり、異性であったんでしょう。
二人がある土工(日雇い人夫)を追い抜いたときに、女は少年に
「あの人に用があるから、先に行って。」
と言います。少年は、
「待っている。」
と言いますが、女はここで別れようと無理からに少年と別れます。
そして次の日、土工が殺されているが発見され、その女は警察に捕まります。
時はすでに30年過ぎた、当時少年だった男が経営している印刷会社へ、元刑事が訪ねてくるところから物語りはスタートします。
未解決の事件調書を本にまとめるために、元刑事はその印刷会社に依頼したのでした。
その調書により、物語は進行しています。
女は娼婦で、お金ほしさに通りすがりの土工に身を売り、関係を持ちました。
殺人現場に残されていた足跡が、女と一緒の大きさなので、それが決め手となり、逮捕になりました。
しかし女はずっと否認を続け、裁判で無罪となり、事件は迷宮入りしました。
それから30年、元刑事は現場に残された足跡が、大きさ的に女と決め込んだ失敗に気がつきます。
となると、犯人は誰?動機は?
その真相には、説明はつかないが、気持ちはわかる。 というものがあります。
この小説、犯人探しの推理小説というより、叙情的な物語です。
この作品テレビ・映画に何度もなっていて、TBSでは少年役にデビューしたての嵐の二宮くんが演じています。
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