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TOWEL STORY~ギフト篇~第1話


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クリスマスが近づいているこの時期、毎年ショートストーリーを披露していますが、今回は長編なので4回連続。

それでは、TOWEL STORY~ギフト篇~のはじまり、はじまり・・。

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きれいなドット柄のフタを取るとタオルが入っている。ふわふわでやわらかいタオル。

・・・よし!これでいい!・・・

今年51歳になるユズルはギフト箱に入ったタオルを確認し再びフタをした。

毎年クリスマスに恩師の前田久美にタオルをプレゼントしているが、それには理由があった。

今から41年前・・日本中がミューヘンオリンピックに沸き返っていた1972年夏のこと。

ユズルは10歳だった。

病弱だった母親はユズルの誕生とひきかえに亡くなったので、父親一人で育てられていた。

当時学校の担任だった前田久美は33歳 独身。

ユズルが片親であることをいつも気にしていた。

ユズルの服はいつも同じで、洗濯もめったにしていない風。足は素足でかなり汚れている。

男手ひとつで働きながら子供を育てるのは並大抵のことでなく、洗濯や子供の服装にまで目が行き届かないのだろうと思っていた。

「ねぇユズル君。今晩先生とお風呂行こうか?」

「なんで?」

「先生の家、今お風呂を直しているんで、しばらく銭湯通いなの。だから一緒に行かない?お父さんには先生から言っておくわ。」

ユズルは断る理由もないので、一緒に行くことにした。

ユズルのアパートに前田久美が迎えに来てくれ、そこから歩いて銭湯に行った。

「じゃあこれ、洗面器と手ぬぐいと湯上げ(バスタオル)、そして着替えが入っているからね。」

前田久美が用意していたお風呂道具セットを手渡され、二人は男湯と女湯に別れた。

父親が早くに部屋に帰ってきたときは一緒に銭湯に行くが、大体は遅くに帰ってくるのでお風呂に入らない時が多い。

「ユズルく~ん。ちゃんと体洗っている~?」

湯桶がタイルに当たる固く余韻の長い音の間に、前田先生の声が響いてくる。

「先生~。洗っているよ~。」ユズルも応える。

「足もちゃんと洗うのよぁ~。」

ユズルは先生の声を聞きながら、あたたかいものを感じていた。

つづく・・。

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