2011/12/05| 七福萬来
はんなり
茶屋遊びの続き・・。
「”はんなり”って京都の言葉ですよね。どういう時に使うんですか?」
お茶屋の女将さんに尋ねてみたら・・・。
「そうどすな。説明するのはむずかいしどすけど、雪が積もっている椿の木に赤い花が咲いているのを目にした時に 『はんなりしてはる。』って言います。そんな感じどすかなぁ。」
言葉では説明できないが、きびしいそうに見える世界で ”ぽっと” した 可愛いさ や 美しさ を表現するときに ”はんなり” って言葉をつかうんだろうなぁ。と思いました。
その言葉の柔らかさと奥深さ、そしてもうひとつの事を感じずにはいられません。
今回の茶屋遊びを通じてそれを感じることがありました。
京都での茶屋遊びは、”見栄” と ”粋”が融合しています。
お座敷に来てくれた舞妓さんの頭には、かんざしがさしてあり、よく見るとかんざし飾りの小さな札に筆書きの名前がありました。
「菊五郎」「仁左衛門」と書かれてあり、「これってもしかして歌舞伎の・・?」と尋ねると、
「昨日角座でお芝居(歌舞伎)を見に行って、楽屋見舞いに伺った時に、尾上菊五郎はん と 片岡仁左衛門はんに書いてもらったどすえ。」
舞妓さんにとっては、サインしてもらったという”見栄”があり、客との話題にもなります。
役者さんにとっても、楽屋に多くの芸姑、舞妓、お茶屋さんが来てくれることは、他の役者さんに ”見栄” が張れます。
そうして互いに祝儀を出しあって、交流が深まり、取り巻きを取り込んでいっているのです。
京都のお茶屋さんが一見客を入れないというのは、紹介者がいなければならないという事です。
紹介者は、いわば保証人のようなものなので、遊んだ人が仮に支払いをしなかったら、紹介者へ請求書が回ります。
紹介者は、それを含んだ上で友人・知人を連れ立ってお茶屋遊びをします。
ここに 「オレが連れてきた客だから」という ”見栄” があるのです。
ちなみに茶屋遊びの支払いは、すべて後払いでお金を見せる事は ”無粋” とされます。
「もう、そろそろ・・」 と、お茶屋をあとにし宿泊ホテルまで帰り、タクシー代を払おうとしたら、「お茶屋さんから頂戴してますので。」とタクシードライバー。
翌朝、チェックアウトをしようとすると、「お茶屋さんからお土産が届いています。」と、フロントマン。
夜中の1時近くにホテルに届けられたそうです。
“見栄” と ”粋”。そうして花柳界の ”はんなり” を垣間見たような気がします。
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