2010/08/26| 七福萬来
(日本語) 江島屋騒動
産地偽装のニュースをよく耳にしますが、落語でも偽装がもとで身の破滅になる噺があります。
“江島屋騒動” という落語がそれです。
ほとんど笑いのない、シリアスな怪談噺です。
地方のある庄屋(地主)さんの息子が、江戸から移り住んだ母娘の娘・お里に惚れ結婚することになりました。
周囲の反対を押し切っての結婚だったのですが、いったん決まると婚礼まで時間がありません。
支度金として50両もらい、江戸に婚礼衣装を買いに行きます。
仕立てる時間ないので、江戸で一番繁盛している江島屋という古着屋へ買いに行きます。
古着といっても、婚礼衣装一式で48両かかり、長襦袢まで買うことができませんでした。
母娘は、見えないところだからと、あと2両出して半襟ですませます。
婚礼当日、馬に乗せられて庄屋へ嫁いで行きますが、あいにくの大雨です。
その村の風習で、お嫁さんは宴会に列席したお客様ひとりひとりに、お酒をお酌するか、ご飯を持っていかなければなりません。
お里はズブ濡れの婚礼衣装を引きずりながら、給仕をしていたのですが、酔っ払った客がいたずらに、お里が座っている時、衣装のすそを踏んで、立たせないようにしました。
それを知らないお里は、立ち上がったもので、着物の腰から裾まで一気に落ちてしまい、古びた腰巻が露出してしまいました。
この婚礼衣装、 ”いか物” といって、見えているところはちゃんと縫っているのですが、見えないところは糊貼りしているだけでした。
雨で着物が濡れていたので、糊がふやけているところに、裾を踏まれたまま立ちあがったので、腰からはがれ落ちてしまったのです。
来客はその滑稽な姿を笑い物し、庄屋は カンカン怒り、
「よくも恥をかかせたな。破談だ!」と、その場で宴会を中止しました。
お里はそのまま外にかけだし、近くの池に身を投げてしまいます。
ある冬に、この婚礼衣装を売った江島屋の番頭が、行商で吹雪の中迷い、奇妙な老婆の小屋に一晩泊まります。
この老婆は、お里の母親で、あの事件があって村八分されていました。
番頭は、自分の店の商品がきっかけで娘が死んでしまった事実と母親が江島屋を恨んでいる事を知ります。
店に戻った番頭は、旦那に 「”いか物” はもうやめましょう。」と懇願しますが、旦那は 「儲かっているんだから・・」と、聞く耳を持ちません。
そのうちこの江島屋に奇妙なことが起こりはじめ、やがて母娘の亡霊が出るようになり、店はつぶれてしまいます。
偽装という現代にも通じるストーリーです。
涼しくなりました?
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