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TOWEL STORY~ギフト篇~第3話

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あれから何度も前田先生はユズルを銭湯に誘ってくれた。

銭湯に一緒に行くことはとても楽しかった。

用意してくれるお風呂セットは、洗面器に手ぬぐいと湯上げ(バスタオル)、そして着替えの下着。

お風呂の中で歌う歌は、いつも決まって ”巨人の星” だった。

「ユズルく~ん。(湯船に)肩までつかってる?それじゃあ、歌うわよ。さんはい!”♪思い~込んだらぁ~ 試練の道をぉ~・・・” 」

他の子供も一緒に歌ったり、笑ったり、歌い終わると他の入浴している人から拍手がおこったりすることもあった。

お風呂から上がり、湯上げ(バスタオル)で体を拭く時に、ユズルはわざと頭だけ拭かないようした。

それは、銭湯を出た時に先生に頭を拭いてほしかったからだ。

前田先生は「ちゃんと拭かないと風邪ひくわよ!」と、笑顔で毎回ユズルの頭を拭いてくれた。

その度ユズルの小さな頭は左右前後に揺れ、その度二人は声を出して笑った。

銭湯からの帰り道、満天の星空を眺めながらユズルは先生の家のお風呂がずっと直らないようにと祈った。

12月になった。

「ねぇユズル君。サンタさんに何が欲しいっていうの?」

銭湯からの帰り道前田先生が尋ねてきた。

ユズルは父親との二人暮らしで、クリスマスだからといってプレゼントをもらったこともなく、当然今までサンタクロースに何か願い事をしたこともなかった。

父親からの愛情がないわけでなかったが、子供ごころに自分の置かれている状況はわかっていたので、モノをねだること自体を考えないようにしていたのだ。

でも先生に言われて 「・・・湯上げ(バスタオル)がほしいです。」 小さな声で答えた。

ユズルにとって、湯上げ(バスタオル)は自分を包んでくれる、いや構ってくれる アイテムだった。

それを察知した先生は、腹の底から込み上げる塊に一瞬顔が崩れかかったが、すぐに気丈な顔つきになり、

「うんわかったわ。先生からもサンタさんにお願いしてみるね。ねぇユズル君。生まれたての赤ちゃんが初めて触れる布ってタオルなの。大事なものを包むからタオルってやわらかいのよ。きっと持ってきてくれるわ。」

その時、満天の星空から一筋星が流れた。

そして クリスマスイブ・・。

つづく・・。

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