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言葉

電車に乗り込むと、車内はほぼいっぱいになりました。

もちろん私も座る席がなく立っています。

電車がまもなく発車しようとした時に、私のななめ後ろ側に座ったばかりの若い女性がすっと立ちました。

・・・あれぇ、電車を乗り間違えたのかな?・・・

そう思ったら、その女性はドア近くに立っていた、杖を持ったおばあちゃんに近寄り声をかけ、席を譲ったのです。

おばあちゃんは、ハニカミながらもその女性の好意に応え、感謝の言葉を言って譲られた席に座りました。

その後、その女性は譲った席に背を向けた形で吊革に手をかけて立っていました。

次の駅で、彼女の立っている前の席が空き、彼女は座りました。

さきほど席を譲ったおばあちゃんが真正面にいます。

おばあちゃんは席を譲ってくれた彼女が座れた事に安心したのでしょう。

やわらかい笑顔を彼女に送り、彼女もそれに応えるように小さくうなずいていました。

よくある風景ですが、言葉がない会話というか、意思の疎通というか、あたたかな気持ちになりました。

それに比べ、言葉使いが悪く、辞職した大臣は、意思の疎通さえ感じられませんでした。

・・・言葉って大事。でも気持ちも大事。・・・

少し前、大阪の地下鉄に乗ると車内に多くの小学生が乗っていました。

おそらく遠足の帰りでしょう。

はちきれんばかりの元気が会話となり、車内は賑やかでした。

私は、吊革につかまり立っていましたが、そのうち前に座っている子供二人がすっくと立ち、

「どうぞ!」

私に席を譲ろうと子供たちが席を立ったことを理解するまでに、ちょっと間ができてしまいました。

「・・・あっ、いや、いいよいいよ。君たち座っていなさい。」

と言おうと思いましたが、子供たちの小さな勇気を潰しても悪いと思い、その言葉は呑み込み、

「ありがとう。」 と言って、席に座りました。

人生で初めて席を譲られ、自分で赤面するのがわかるほど照れてしまいました。

「遠足だったの?」 との問いに、

「そうです。・・・オジサンはお仕事ですか?」

「そうです。だから疲れていたんだ。ホント助かったよ。」

・・・言葉って大事。でも気持ちも大事。・・・

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