2014/12/24| 七福萬来
TOWEL STORY~魔界篇~最終話
あの日のクリスマスイブは、朝から雪が降り積もったホワイトクリスマスだった。
赤いマフラーをしたミナはクリスマスだからと言って特別な雰囲気もなく、いつもの様子だった。
「ジュン!メリークリスマス!」
朝学校に行く道でも、白い息を吐きながら、いっぱいしゃべりかけてくる。
「クリスマスケーキ食べすぎると太っちゃう!でも今日だけはいっぱい食べるんだ!」「ねえジュン。サンタさんに何たのんだの?私はねぇ、エヘヘヘ・・・ヒ、ミ、ツ!」「アハハハ・・」
・・・今日はクリスマスイブなんだぞ!人の気も知らないで・・・
幼なじみにしか見えてないのだろうと思うと、やはり切なくなった。
学校が終わり、一人家に帰っていると、雪がかなり強くなってきた。
しかも風もあるので地面の雪も舞い上がり、視界が急に悪くなり、周りが真っ白になった。
ホワイトアウト現象だった。
・・・こりゃマズイ・・・
ジュンは自分が真っ直ぐ歩けているのかどうかもわからなくなっていた。
歩幅を狭めて歩いていると、遠くからでもなく、近くからでもないところから子供の声が聞こえてきた。
「チャンス!・・ジュン!チャンスだ!」
吹雪でうつむきがちに歩いていたのだが、その声に反応して前を見ると赤いものが目に入った。
見覚えのある赤いマフラーだった。
「お~い。ミナか?」「わぁ~ジュン??」
ミナもこの吹雪に巻き込まれて帰る道の方向を失っていたのだった。
「ジュン寒いよ。」 「オレにしがみついてろ。」
ジュンはしがみついてくるミナの肩を抱え込みながら、必死に励ました。
「大丈夫、大丈夫。オレが一緒にいるから。あとでオレのタオルで拭いてあげるから。がんばれ!」
「ジュン、アリガトウ。」
「でもなぁ~クリスマスなのになんなんだこの天気は。」
「でも、この天気のおかげでジュンに抱きつくことができたよ。」
「えっ?!」
その言葉にジュンの心がアツくなった。
「雨の日にずぶ濡れになった時にジュンのタオルを貸してもらった時に気がついたの。私、ジュンのことが好きだって。でもジュンは私の事を幼なじみとしか思っていないみたいだし、想いを伝えるのが怖くて。」
「エヘへ・・実はオレも、あの雨の日からミナのことが気になってしかたがないんだ。でもミナに嫌われたくなくて普通にしてたんだ。」
その言葉にミナはジュンの胸に顔をうずめ、ジュンはミナの肩をきつく抱き寄せた。
「オレ、ミナの事 大好きだよ!」
ジュンが素直に告白できたのは、ホワイトアウト現象で、周りが真っ白で二人だけの世界が出来上がっていたのかも。
お互いが想いを伝え合うと不思議なことに吹雪は収まり、雲の切れ間からやさしい陽の光が雪を照らし始めた。
その光の中から小さな男の子と女の子が浮かび上がり、ここでポン吉とシェリーの登場。
「願いは叶ってよかったね!でも魔法で気持ちを引き寄せたんじゃないよ。僕たちはただきっかけを創っただけ。」
話を聞くと、ポン吉とシェリーのいる魔界にはルールがあるらしい。
そのルールとは、人間界に忘れかけたやさしさを広めることだそうだ。
魔界に戻る時にやさしさを持ち帰えなければならないのは、目的を達成させるためでもあった。
「人を好きになるとみんなやさしくなるんだ。だから僕たちはきっかけを創っているんだ。やさしさのきっかけをね。」
ポン吉は笑顔でそう言うとシェリーの手を引いて雪の陽の中に消えていった。
みなさんの近くに泣いている子供がいたらそれはポン吉とシェリーかもしれません。
メリークリスマス。
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