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帰国

パリから帰国し、日本の何ともいえぬ平和感は、とてつもなく心地よいです。

パリでの最終日のこと、デザイン事務所F先生とフランス在住のアテンドDさん、そして私の3人でランチを食べた後ホテルまで歩いて帰っていたら、真冬なのに草履をはいた少女3名が近寄ってきました。

手にはペンと何やら書類を持っています。

署名を求めてくるような感じで、勢いよく私たちにペンと書類を押しつけようしたとき、Dさんは叫ぶように言いました。

「気をつけて!この娘たちスリですよ!!」

「えっ!」「マジ!?」

F先生と私はあわてて肩からかけたバックを前にし、できるだけ早足にホテルを目指しました。

すると、その3人の娘たちも同じく早足でついてきます。

後ろを振り向いたわけではないのですが、この娘たちがはいていた草履の足音が聞こえてくるのです。

ヒシャ、ヒシャ、ヒシャ、ヒシャ・・・

その足音は離れていくどころか、近づいてくるのです。

ヒシャ、ヒシャ、ヒシャ、ヒシャ・・・

彼女たちはジプシー(浮浪者)で、生きる手段としてスリを繰り返しているとのことですが、せつなくなりました。

ホテルに戻り、空港へ向ったタクシーの中でもまたせつなくなることが。

3名だったので、私が運転席の助手席に座ると運転手さんがしゃべってきたのです。

「あなたたちは中国人?」

「いや日本人です。あなたはフランス人ですか?」

「いやアルジェリアです。」

別にアルジェリア人が悪いわけではなく、運転手がどうかというわけでもないのですが、テロ事件のことが頭によぎり言葉に詰まってしまったのです。

結果的ですが、会話を中断してしまった私は未熟者です。

パリから成田空港に到着すると、”プレス” と書かれた腕章をした記者らしき人に声をかけられました。

「アルジェリアから帰国された方ですか?」

よほど疲れた顔していたんでしょうね。

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