2012/04/04| 七福萬来
欲というもの
テレビから電力料金値上げの話題が映っていました。
競争相手がいないからと言って、都合で値上げしていくことに、腹が立ったり、うらやましかったり。
零細企業にとって安易な値上げは到底できなことです。
“お金” って、生きていく上で必要なものですが、”欲” が度を過ぎるとこれまたドロドロな人間関係になります。
そんなことはわかっていながらも、今日もお金に係わるニュースばかりです。
落語にもお金に係わる演目がたくさんあります。
「田能久(たのきゅう)」 という落語もそのひとつです。
この落語、江戸落語にして舞台は四国です。
阿波の国、今の徳島県に田能村に住む久兵衛さんというお百姓さんがいました。
地元に人は久兵衛さんのことを 「田能久(たのきゅう)」さんと呼び、得意の芝居を見せては人気者になります。
“田能久一座”なる芝居ユニットを結成し、伊予(愛媛)の国、宇和島へ芝居興業に来たのですが、お母さんの急病の知らせを受け、一人徳島に帰ることになりました。
その帰りの山道で仮眠をとっていたら大蛇に出会い、食べられそうになり寝たふりをしていると。
「何をタヌキ寝入りしているんだ、お前は何だ?」
「田能久(たのきゅう)です。」
「ん?!タヌキ??うそをつくな!何故人間の格好をしている?」
田能久さん、持っていた風呂敷包みに入っていた芝居道具で女や坊主に変身し、大蛇を信用させます。
「うまく化けるところを見ると本物の狸なんだな。同じ獣(けもの)仲間じゃあ、食う訳に行かんな。」
それから、誰にも言わない約束の上で、世の中で一番嫌いなものは何か言い合おう。ということになり、大蛇は煙草のヤニといい、田能久さんは”お金” と言います。
大蛇が、煙草のヤニが嫌いな理由は、体が溶けてしまうからで、田能久さんが ”お金” が嫌いな理由は、人間の欲が嫌いだからと打ち明けます。
大蛇から解放された田能久さんは、下山した村人にそのことを伝え、煙草のヤニをたくさん持って大蛇退治をし、阿波の国に戻ったのですが、夜中に死んだはずの大蛇が血まみれになって現れます。
「よくも喋ったな!お前の一番嫌いなモノをくれてやる。覚悟しろ!」 と言って、抱えた箱を放り出すと消えていきました。
箱の中をのぞくと、小判で一万両 入っていました。というオチ。
この落語を何度聴いても、うらやましと思うのは、私も ”欲” が強いのかもしれませんね。
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