2011/12/09| 七福萬来
(日本語) ダンディズム
日本語は、同じ事を伝えているつもりでも、言い方や言い回しによって伝わり方が変わります。
日本語のおもしろいところであり、むずかしいところでもあります。
私の場合、特に年長者や得意先に対してはできるだけ使い分けています。
「あの人の名前を忘れてしまって・・」というところ、「失念してしまいましたが・・」とか、「了解しました。」というところ、「かしこまりました。」とかです。
言葉を変えるだけで、上下関係が明確になります。
これは、数年前に立川志の輔師匠から聞いた話です。
入門したての志の輔さんは、談志師匠に用を言いつけられました。
「少々お待ちください。」
といって、志の輔さんは言いつけられた用を済ませようと、その場を離れようとしたら談志師匠に怒られたそうです。
「何ぃ!手前ぇ(てめぇ)オレを待たせんのかぁ~!」
志の輔師匠は、大学卒業後社会人を経て29歳で入門されました。
なので社会人としての一般教養は身につけており、何故談志師匠に怒鳴られたのかわからなかったそうです。
でも、「少々お待ちください。」の言葉が原因であることは間違いありません。
用を済ませる間ずっとその事を考えたそうですが、どうしてもいい返答が思い浮かびません。
そこで頭のよい志の輔さんは、談志師匠の様子の良い時に尋ねることにしました。
「師匠、あの時に 『少々お待ちください。』と、私が答えた時にお怒りになられましたが、ああいう時ってどういう風に答えればよいのでしょうか?」
すると談志師匠はただ一言
「『ただいま』って言うんだ。」
若き志の輔さんはここでまた考えたそうです。
そういえば、あの時は別に用事をしていたわけでもなく、師匠からの用事を言いつけられるのを待っていた状況であり、そんな時に「少々お待ちください」っていうのはそりゃ怒るだろう・・と。
落語家は、言葉で飯を喰う稼業だから、言葉の使い分けができなければならないという事です。
談志師匠がお亡くなりになった時に 「ダンディズムでした。」と、志の輔師匠がコメントを言っていました。
そのコメントの一端に、このエピソードが重(かぶ)っているような気がします。
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