2016/02/22| 七福萬来
(日本語) 不思議な薬
退院後1週間。世間は止まることなく動いていて、私は求められるがまま、フツーに社会復帰しています。
2日前のこと。
東京出張に行くために松山空港から飛行機に乗っていると、あとから搭乗した男性が私を見かけてニヤッとしてくる。
思わず私もニヤッとしましたが、顔に見覚えがあるが、どこの誰なのかすぐには思いつかない。
「スミマセン・・どちらさまでしたっけ?」
こうゆう時はスパッと尋ねたほうが早い。
「四国がんセンターの○○です。出張ですか?」
「ああぁ~先生!」
1週間前まで入院していた病院の先生でした。
私の主治医は女医さんですが、入院患者には担当科に在籍している4人の先生全員で診てくれます。
声をかけてくれた先生は、そのチームのおひとりで、すぐに気がつかなかったのは、マスク姿が多かったから。
ほんのすれ違い程度の会話は、傷だけでなく心まで癒やす不思議な薬のように思えました。
なぜ、こんな気持ちになったのかというと、入院中にこんなことがありました。
病院のエントランスにある、全医師が写真付きで掲示されている大きなパネルを見ていたら、ご年配のご婦人が声をかけてきました。
「先生方はどんどん変わっていくんですよね。」
見ると、パジャマ姿だったので私と同様の入院患者さんでしょう。
実は私も同じ気持ちでパネルを眺めていたのです。
国立病院という組織上、医師の転勤はつきものです。
数年間で主治医は変わるだろうし、入院患者を担当科全員の医師チームで診ている理由は誰がいつ転勤してもいいようにでしょう。
「次の先生がどんな方なのか・・変わるたびに不安になるんです。」
静かにお話しされるご婦人に同感しつつも、どのようにお応えすればよいか躊躇したあと
「きっと勝るとも劣らない素敵な先生が来られますよ。・・どうかお大事にされてください。」と、言いました。
するとご婦人はわずかに微笑んで、「お互いにね。」と、もう一度パネルを見つめていました。
考えてみれば、患者以上に先生方も万感の思いで転勤されるのでないかと思います。
だからこそ、心までも癒してくれるコミュニケーション力を持たれているのだと・・。
いや待てよ?声をかけてきたのは 「退院間もないのに出張はまだ早い!」 と言いたかった?
いずれにせよ、先生に感謝です。
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